2003年08月25日(月)
ある経営者と話をしていると、「成長領域が、まったく思い浮かばない」という。これは、組織の生存にとって極めて深刻な悩みである。そして、多くの経営者が今日、多かれ少なかれ抱えている共通の悩みでもある。
原因はいろいろと考えられるが、要は市場における競争力の低下である。つまり、今まで組織の成長を支えてきた強みが、ひと言でいうと、環境条件の変化で、思うように機能しなくなったのである。このように、現象的に捉えると、「環境の変化によって、自社の強みが市場にフィットしなくなった結果である」といえる。
しかし、そのような状況を認識していながら、打つ手がなく、現状に甘んじるしかない体質にこそ、悩みの根っこがある。
それは何か・・・。「創造的破壊」という言葉があるが、創造性がないから、機能しなくなった強みを破壊できないでいる。つまり、“創造性の欠如”こそ、悩みの本質ではなかろうか。
考えるに、市場の成熟化により、顧客の価値は明らかに量より質へと変化しつつある。つまり、企業の戦略は、“量から質への転換”を迫られているといえよう。そこに、“創造性”という課題が浮き彫りにされてくる。
量はパターン化できても、質はパターン化できない。言葉を変えると、パターン化できる量の戦略はいくらでもコピー(真似)ができるが、質の戦略は容易にコピーすること(真似ること)ができない。
個々の企業の創造性こそが、組織の明暗を分ける重大な決め手となる。今はそのような時代であるということを、私たちは強く認識すべきである。
そして、創造性を高めるために必要な条件として、次のようなことが考えられる。
① 常に目的を明確にすることである(目的志向)。② 量より質が問題であることを認識することである(戦略の方向性)。③自己革新こそが成長であるといえる価値観をもつことである(企業風土)。
顧客の創造こそが、企業の目的であるとするならば、顧客の満足を充たすものが何であるかを追及し続け、それに応えきれるように自己革新をやり続けることこそ、企業の創造性を高める唯一の方法ではないだろうか。
顧客は何を求めているのか、顧客の満足に貢献するためには自社の強みをどのように活かせばよいのか、また新たに獲得すべきなのかを視点において、自らの頭で考え続けることが、創造性の向上につながる。
目的の独自性が、創造性の源泉である。そして、無目的な創造は、なんら成果を生み出さない。