2004年01月05日(月)
滅多にないことであるが、お正月に家族でハリウッド映画「ザ・ラストサムライ」を観に行った。
子供の頃は、お正月といえばどこの映画館でも超満員で、タバコのにおいや熱気で人酔いするほどであったが、斜陽化のイメージと共に映画を楽しむことを忘れていたようだ。
いまや映画館もお洒落になって、複合型のショッピングビルのワンフロアに何軒も並んで入って、共存し合っており、全座席指定で満席になったら入れない。もちろん、室内は禁煙で、においもなく、座席もゆったりしており、煎餅とちがって、ポップコーンは食べていて気にならないし、いかにも若者や女性的な文化の匂いがする。
いつの頃からだろうか、映画館は若者と女性のためのアミューズメント・プレイスとして甦っていた。
さて、本題の「ザ・ラストサムライ」についての感想だが・・・・・。明治維新直後の近代化を急ぐ日本が舞台である。主人公のオールグレン大尉(トム・クルーズ)は南北戦争の英雄であったが、インディアン討伐の戦いに失望し、酒におぼれる日々を送っていた。その彼が、日本政府の要請で近代的な軍隊の指導のために、日本へ招かれるところからストーリーがはじまる。
勝元(渡辺謙)率いる反政府軍のサムライ一族との戦いで捕らえられ、彼らの村で生活を共にするうちに、オールグレンは、“運命(さだめ)を受け入れつつも、自らの信念を貫いて生きる武士道の精神”に心を動かされる。
ハリウッド映画にしては、武士道という日本文化にまともに向き合って描かれており、随所に感動的なシーンがあり、泣かされる。その中でも、村に連れて来られたオールグレンをタカ(小雪)という女性が親切に介抱するが、戦いで殺した男が彼女の夫であることを知り、オールグレンがタカに詫びるシーンがある。
「夫もあなたも共に、自らの為すべきことを為した結果であり、運命(さだめ)だったのです」と、タカがいうせりふは、なぜか心が打たれ、ジーンときてしまった。
これほどまでに感情を殺し、使命を全うする生き方を、今の日本人の中でどれほどの人ができるのであろうかと、深く考えさせられたシーンである。
現代日本人が失ってしまった死生観を、昔の日本人はどのようにして培ってきたのだろうか。葉隠れに「武士道とは死ぬことと見つけたり」という言葉がある。一日一日を無駄に生きてしまうのは、死について深く考えないからだろう。
以前に読んだ新渡戸稲造の「武士道」を思い起しながら、久々に映画館で映画を楽しませてもらった。