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考える言葉

 

協働の場

 
2004年04月19日(月)

 組織に参加する個人が、「組織と個人との関係」についてどのように認識しているかという問題について考えてみたい。
 人は、AとBの関係を捉えるときに、それを対立関係で考える人と、逆に共存関係で考える人がいる。前者を“分離思考の人”、後者を“統合思考の人”と呼びたいと思う。
 人間の思考は、その人の価値観(思考の枠組み)に支配されているから、その人の価値観が変わらない限り、前者はつねに対立関係で、後者はつねに共存関係で考える、そのような思考の癖があるといってよいだろう。
 組織に参加する個人においても、この二つに分類できる。問題なのは、当然ながら前者の“分離的思考の人”である。
 このような人は、どうしても組織の目的を共有できず、独善的、独断的に陥りやすいのである。組織の中で分裂状態をひき起こすのは必ずこのタイプ人である(経営人間学講座)
 ジャック・ウエルチ氏がGEのトップに就任した時、どんなに能力が高くても組織の価値観を共有できない人を徹底的に排除したのは有名な話であるが、“協働の場”としての組織の本質を考えると、理にかなった決断である。しかし、勇気のいることでトップ自身の価値観が高くないと、できない話である。
 私たちは、人を採用する時に、能力面を偏重し、その人がどのような思考の人であるかを見極めないでいるのではないだろうか。
 組織社会で生きる私たちは、組織と個人はある意味において運命共同体であることを、自覚する必要がある。すなわち、「全体は部分であり、部分は全体である」という確信を、一人ひとりが持ち得るかどうかである。
 がん細胞は、他との共生を忘れ、自己主張の論理で増殖し、結果、自らが依存すべき場を食いつぶし、自らも死に至る。「私は、その、がん細胞ではない!」と断言できるであろうか。
 場を共有する関係にあるものは、疑う余地もなく、相互補完関係ある。それをそのように認識できない自分は、分離思考であり、つまり、がん細胞であると考えたほうが良い。
 変化の時代は、自己革新なくして生き残れないのである。自己革新には、厳しい自己言及が伴う。
 「組織と個人の関係」は、個々人が自己言及していく緊張関係のなかで止揚し、目的を実現していくものだと、私は考える。