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考える言葉

 

キャッシュフロ-計算書の基本的考え方

 
1998年12月28日(月)

今回はキャッシュフロ-計算書の基本的な考え方について検討してみたい。
 キャッシュフロ-計算書を作成する目的は、「儲かったお金はどうなったのか」を明らかにすることにある。つまり、損益計算書と貸借対照表の二表だけでは解りにくい「利益とお金の増減のつながり」をより明確にすることにある。
 実は、私たちプロはこの二表からキャッシュフロ-を読み取ることができる。ということは、この二表から比較的簡単にキャッシュフロ-計算書が作成できることを意味している。
 キャッシュフロ-計算書は、企業の一定期間のキャッシュフロ-(現金・預金の流れ)をあらわすものであり、キャッシュフロ-を「営業」「投資」「財務」の三つの部分に分けて計算する。
 では、各項目ごとに内容の説明と計算の仕方について説明したい。
(1)営業キャッシュフロ-
 営業活動のなかで、どれだけのキャッシュフロ-が生じたかを示したものである。
 企業存続の基盤はその営業から得られるキャッシュフロ-であるから、この「営業キャッシュフロ-」がプラスとなっていることは、健全経営の大前提である。
 その具体的な計算方法は、次の①から③を合計することによって算出される。
  ①損益計算書上の「純利益」(利益はプラス、損失はマイナス)
  ②損益計算書上のキャッシュフロ-が動かない項目
    *減価償却費(プラス)、*諸引当金(プラス)、*評価損(プラス)
  ③貸借対照表上のキャッシュフロ-の増減項目
    *受取手形・売掛金の増減(増はマイナス、減はプラス)
    *支払手形・買掛金の増減(増はプラス、減はマイナス)
    *在庫の増減(増はマイナス、減はプラス)
    *前払費用・前受収益等の増減、
    *その他
   (注)貸借対照表上の科目の増減については、資産の増はキャッシュのマイナス、資産の減
      はキャッシュのプラスとなる。
      逆に、負債の増はキャッシュのプラス、負債の減はキャッシュのマイナスとなる。
(2)投資キャッシュフロ-
 投資活動のなかで、どれだけキャッシュフロ-が生じたかを示したものである。
 投資活動には、設備投資、合併・買収、長期あるいは短期の投資などが含まれ、投資によるキャッシュフロ-の流出と投資回収によるキャッシュフロ-の流入の双方が表示される。
 具体的には次のような項目の増減を合計することによって算出される。
    *固定資産の購入(マイナス)
    *固定資産の売却(プラス)
    *投資有価証券の購入(マイナス)
    *投資有価証券の売却(プラス)
    *長期貸付金の増減(増はマイナス、減はプラス)
    *その他
(3)財務キャッシュフロ-
 財務活動のなかで、どれだけキャッシュフロ-が生じたかを示したものである。
 営業活動や投資活動の結果生じたキャッシュの過不足が、ここにおいて最終的に調整されるので、企業の財務体質が最も反映されているところである。特に、資金調達がなされている場合には何に使われているのかよく調べて見る必要がある。
 具体的には次のような項目の増減を合計することによって算出される。
    *短期借入金の増減(増はプラス、減はマイナス)
    *長期借入金の調達(プラス)
    *長期借入金の返済(マイナス)
    *社債の発行(プラス)
    *社債の償還(マイマス)
    *自己株式の買取り(マイナス)
    *増資(プラス)
    *その他
 以上、(1)(2)(3)を合算すると、一定期間におけるト-タルのキャッシュフロ
-(現・預金)の増減が把握できる。そして、当然であるが、その増減額は貸借対照表の期首からの現・預金の増減額と一致する。
 少しややこしい説明になってしまったが、百聞は一見にしかず。興味を持たれた方はご一報ください。
 キャッシュフロ-経営の目的は、事業評価の基準を「売上や利益」ではなく「キャッシュフロ-」に置くことによって、財務体質の改善を図り、自立の道を切り開くことにある。
 よって、次回はさらにキャッシュフロ-改善のポイントについて考えて見たい。