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考える言葉

 

後継者問題に悩んだ頃

 
1999年05月24日(月)

 十年一昔と言う言葉があるが、十年前と言えば、日本の経済はバブルの最中。多少危うさを感じた人はいたと思うが、個人も企業も負債(借金)と両建てで資産が膨れていった時代である。あらゆるモノが投機の対象として考えられ、5~6年もすれば、借金以上の含み資産ができてプチ資産家気分に浸っていた。

 当時のオーナー経営者の悩みと言えば、形成した資産と事業をいかに上手く後継者に引き継がせるか、つまり事業承継対策であった。今、オーナー経営者で自分の子息に会社を継がせたいと切望している人がどれぐらいいるだろうか。今や、完全に少数派となっているは事実である。

「後継者に会社の将来を託する夢すら描けない」、この経営者マインドの体たらくにこそ経営問題の本質が潜んでいるような気がしてならない。目先のことに追われ、2~3年後のあるべき姿は勿論、自分後の会社のイメージなんて想像も及ばない。

 今の自分を維持するのがやっとこさであって、社員やその家族の事を考えたり、あるいは自分の会社を支えてくれている環境(地域社会、国、世界、あらゆる自然など)への恩返しなどについて考える余裕すらない。

 バブルが弾け、土地や株価などの下落で資産の含み益はなくなったが、元々そんなものは企業の絶対評価基準でも何でもない。企業の存在価値は、世の中のニーズ(必要)に正しく応え切れているかどうかである。

 変化の激しい時代に生き延びるためには、大局を見間違えないことである。目先のこと、自分のことにしか目をやらず、もがいても流されるのが落ちである。自社の存在感を明確にすべきである。未来において存在し得る価値があるかどうか。自分後を担ってくれる事業の後継者達に何を伝達すべきなのか。

 現状に埋没せずに、時間と空間の無限性に早く目覚めること。エネルギーの活動が弱まることほど恐ろしいことはない。後継者に承継させたいと思えるような魅力のある事業体を常に思い描いて経営すべきである。

「人は、自己評価以上の評価を他人に期待できないのである」