本文へ移動

考える言葉

 

ワンマンとリーダーシップ

 
2001年02月05日(月)

 この世にワンマンと呼ばれる社長はごまんといる。中小企業の経営者に、よく見かけるタイプであるが、黄昏を迎えた大組織にも多い。

 同じワンマンでも、中小企業においては“お山の大将”タイプが多く、何でも口を出したがり、目先のことに追われる。大組織のそれは、“権力志向タイプ”が多く、権力の甘い罠に嵌まり、現実が見えなくなっている。
 いずれにしても、ワンマンは独断専行に陥りやすく、人の意見に耳を傾けなくなり、またそういった機会を失い、自ずと視野が狭い人間になってしまう。

 最近、「ワンマン待望論」をよく耳にする。その背景には、変化の激しい時代ゆえに問題解決における即断即決の舵取り、強力なリーダーシップの必要性からであろう。確かに、組織の変革には強力なリーダーシップが欠かせない。しかし、ワンマン(one-man)の本質は“自己中心”であり、独断専行的であることを忘れてはならない。リーダーシップの本質とは異なるのである。
 では、リーダーシップの本質とは何か?それは“組織中心”であり、組織の目的(何のために存在しているのか)を問うことから始まると考える。

 故に、リーダーシップの素養は“ワンマン”にあるのではなく、次の点にある。

 (1) 組織の置かれている現実を直視することを怠らないこと(現実重視)

 (2) リスクを恐れず、前進し、変化し、未来を切り開くこと(自己革新)

 (3) 個人的利益よりも、組織の目的を最優先し、

                勇気をもって自己の信念を貫くこと(目的指向)

 (4) 他から共感・共鳴される高い価値観をもち得ていること(動機付け)

 (5) スタンダードを高くし、妥協を許さないこと(大胆な目標を掲げる)

 そして、リーダーとは「創造的思考と勇気ある行動」をとれる人であると言えよう。
それから忘れてならないことは、ワンマンは傲慢なゆえに人を排除してしまう。つまり、人材を育てようとは決してしない。組織が崩れていく所以である。真のリーダーシップとは、次世代のリーダーを育てることにある。ワンマンの本質は地位への執着であり、リーダーシップのそれは組織への使命であるといえよう。その意味において、ワンマンとは社長という地位の属性とも言えるが、リーダーシップはそうではない。

 大転換期(乱世)の混迷が続く中、リーダー不在を嘆く声が多いが、自らがリーダーとしての自覚に目覚めることが大切である。そして、リーダーとしての可能性は誰にでも存在していることを信じて、リーダー的役割を担ってみよう。

 自分が向き合っている現実を左右するのは、究極のところ自分自身である。