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考える言葉

 

聞き上手

 
2001年05月28日(月)

自分が“話し上手”であるかどうかを気にする人は多いが、“聞き上手”であるかどうかを気にしている人は意外と少ないような気がする。
その証拠に、話し方教室はビジネスとして成り立っているが、聞き方教室があるとは聞いたことがない。
しかし、不思議なことに、話し上手と聞き上手どちらが多いかといえば、圧倒的に話し上手に軍配が上がるのではないか。しかも、どちらかと言うと、話したがりやが多い。
最近少し気になって、「人の話を聞く」姿勢を観察して見た。
①話しを全然聞いていない人
②聞いている振りをしているだけの人
③関心のある個所だけ聞いている人
④相手の言うことを注意深く聞いている人
⑤相手の立場に立って共感・共鳴して聞いている人
勿論、ここで言う“聞き上手”とは、⑤を云うのであるが、めったにお目にかかれない。
話し方はテクニックを学び、経験を積めば何とかなるが、聞き方はそうはいかない。何故ならば、「相手の立場に立って、共感的に聞く」姿勢は、テクニックによって身に付くものではなく、その人の持つ価値観の具現化だからである。
松下幸之助は、経営者にとって大切なことの一つとして「部下の話を素直に聞くこと」を挙げている。衆智を集めることができるからである。
経営の神様は、まさに“聞き上手”であったという。そして、素直な態度で聞くことによって自らが成長し、いろいろな質問をすることによって多くの人材を育てたという。
「相手の立場に立って、素直に聞く」ということは、その人の根底にある“価値観”に耳を傾けることである。それ故に、テクニックが通用しないのである。
良きカウンセラーは、ヒヤリングを通して自分と相手を徐々に同化させ、安らぎを与えるという。クライアントからの信頼が厚いコンサルタントは、やはり、聞き上手で質問上手だ。
良好な人間関係の本質は、価値観の共有をベースとした相互理解と信頼にあると考えるが、その唯一の手段は“聞き上手”にあるのではないか。
そして、私たちは、“聞く姿勢”を通して、その人の人間性を垣間見ることができる。
故に、学ぶべきは“聞き方”である。