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考える言葉

 

経営診断力

 
2002年03月11日(月)

 去る2月27日、政府の総合デフレ対策が発表された。

不良債権処理は、「デフレ克服の第一歩である」という認識であるから、大手銀行への特別検査は一層強化されることになろう。

 日本経済が世界のマーケットから信認を得るためにも、不良債権処理が緊急課題であることに異論はない。しかし、それに伴う社会問題である、中小企業への"貸し渋り"は、銀行の資質を疑いたくなる。

 金融検査マニュアルを楯にとって選別融資(貸し渋り)をしたり、保証枠が広がると安易に貸し出したりする。要するに、自分のリスク回避ばかり考えて、社会的責任を担おうという姿勢がみられない。

 それに、政府がどんなに"貸し渋り対策"を講じようと、その窓口である銀行に"企業を診る眼"、すなわち、眼力がない限り、税金の無駄遣いを促進させるだけであろう。

 ずっと担保至上主義でやってきた銀行に、"企業を診る眼"つまり真の"経営診断力"がないところに大きな問題があるといえよう。

 多くの中小企業は、銀行依存の資金調達(借金体質)をやってきたので、自己資本が乏しい。ゆえに、思い切った財務体質の改善を図ろうとすると、一時的に債務超過に陥らざるをえないこともある。

 銀行から「債務超過になったら、その後の資金対応が難しい」といわれると、改革の決断を躊躇せざるをえない。

 決算書をマニュアルに当てはめて判断するだけで、「木を見て、森を見ることができない」のである。

 企業の現場に赴き、技術力や販売力やどんな経営努力をしているのか、企業の実態を自分の目で確かめ、現状の財務内容だけにとどまらず、成長性を総合的に判断する眼力を養ってもらいたいと思う。

ひょっとしたら、分かっていながら責任を負いたくないために厄介なことから逃げているだけかもしれない。要するに、関わりたくない。

 勿論、企業にも問題がある。自社に対する現状認識が甘く、財務内容を十分に説明できる経営者がどれだけいるだろうか。ましてや、将来のあるべき姿を描き、銀行を説得できる経営者となれば、「おして知るべし」である。

 「自分を正しく知ること(強み・弱み)」から、経営の第一歩がはじまる。手遅れにならないうちに、総合的な経営力診断を定期的に行うことを提唱したい。