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考える言葉

 

理想

 
2002年03月25日(月)

 私たちの多くは、“理想”と“現実”を対立的概念として捉えているのではないだろうか。
 例えば、TV討論なんか見ていても、平行線的な議論が白熱してくると「それは、アンタの言っていることは理想論であって、現実はそうは行かないよ!」と言って、問題を片付けてしまう人が多い。
 広辞苑によると、“理想”とは「考え得る最も完全な状態」とある。つまり、理想とは人間の持つ“思考力の産物”であって、行動の結果として生まれる現実とは異なって当然であると言えなくもない。
 この論理の前提には、「思考と行動は一致しない」という考え方がある。そして、このような考え方に立つと、確かに、理想とは観念論であって、現実的ではないと言えるだろう。
 然しながら、この世の中の多くの成功者は、このような考え方に異を唱えるであろう。彼らは、「思考と行動は一致する」と考えており、「自らの“理想”を描きだす思考力の確かさこそ、信念を生み、力強い行動力の源である」ことを認識しているからである。
 このように考えるならば、理想とかけ離れた現実とは、自らの思考の稚拙さ(思考省略をした結果)が生み出した妥協の産物であり、安易な道を選んだ結果なのである。
 今日、私たち企業人の多くは難問を抱え、目を背けたくなるような厳しい現実に直面している。しかし、逃げるわけにはいかない。そのような現実の中から、解決の糸口をつかみとるしか方法はないのである。
 その時、唯一手掛かりとなるのが“理想”(あるべき姿)であると考える。何故ならば、“理想”は、人生の目的(目的地)であり、行動の原点であるからである。
 どんなにもがき苦しんでも、逃れることができない現実があるとすれば、それは“理想”を見失った結果ではないか。その現実から脱却するためには、自らの心の中に“理想”を取り戻すしかないだろう。
 “理想”は、決して現実からかけ離れたところに存在するのではなく、リンクしており、現実を変革する“力”、そのものであると考えるべきであろう。
 そのように考えることができないとすれば、ひょっとしたら、あなた自身が知らず知らずの内に身につけてきた価値観(思考の枠組み)そのものに問題があるのかも知れない。
 今年もいよいよ「経営人間学講座」(第8期)が始まる。自らの価値観を省みる大切な時間としたい。