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考える言葉

 

シナリオ・ライター

 
2002年06月10日(月)

 低迷状態から脱出できないでいる企業の社長あるいは幹部と話していると、共通した事実に気付かされる。
それは、その原因がいつも外部にあるかのごとき発言が多いことである。つまり、バブル崩壊後における日本経済や金融情勢であったり、業界の見通しであったりで、マクロ的な客観状況に終始する。
確かに周辺的な要因として、影響は受けていると思うが、その企業の問題の核心ではないと考える。何故ならば、このような状況の中でも自己変革し、新たな成長軌道に乗っている企業も多く存在しているからである。
仮に、雨や風が強い日にゴルフ・コンペに参加したとしよう。プレーする人にとって条件は一緒である。この条件をどのように捉えているかは、各プレーヤーの心の持ちようではあるまいか。
企業を取り巻く環境もまったく同じである。要するに、経営者自身の心の奥深くに踏み込んで、自己の意識の有り様をよくよく観察しないことには、問題の特定はできないしだろうし、自分を取り巻く現実から「解を見出すこと」はできないであろう。
企業が低迷している現状を打開できない根本的な問題は、トップあるいは幹部が「自らの方向性を見失っていること」にある。多くの経営者との面談から、私はそのように確信している。
その証拠に、自らの事業計画を描こうともしない、いや描けない経営者がいかに多いことか。未来を共有できていない組織に、切迫した危機感などあろうはずがない。まさに、危機的状況にあるにも関わらずで、ある。
事業計画を作成する目的は、自らを主役にしたサクセスストーリーの“未来小説”を書くことにある。
今、企業にとって大切なことは、経営者自らが率先して、自社の“未来小説”を描くシナリオ・ライターになることではないだろうか。
過去の経験やしがらみを捨て、真っ白な状態で現実と向き合ってみる。分析的に捉えた客観状況と、自社をどのように関係付けていけばよいのか(目的)。その関係性を具現化するには、組織をどのように制度化し、持てる経営資源の位置づけと役割をどのように関係付けるか(制度化)。そして、それらに関わる社員一人ひとりのモチベーションはいかにあるべきか(意識変革)。
現状を打開し、変革の一歩を踏み出すかどうかは、自作自演のシナリオを書くことから始まるのである。