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考える言葉

 

主体性

 
2002年08月26日(月)

 経営計画を策定するお手伝いをしていると、当然のことながら、経営者の抱えているいろんな悩みや事情を聞くことになる。
 抱えている悩みや事情は、まさに十人十色であるが、それに取り組む姿勢はどうかというと二通りに大別できるのではないだろうか。
 それは、「主体性があるか、ないか」のどちらかである。
 そして、経営者自らの問題であるにもかかわらず、どちらかというと他人任せにしてしまう経営者が意外に多いことに、驚かされることがある。
 経営計画をつくる段階においても然りである。一応、顔は出すが傍観者であり、途中で経理任せにして退席する人もいる。銀行や第三者からの支援を取りつけるためのセレモニーとしか考えていないのであろう。
 こんなやり方では、説得力に欠くし、当然ながら支援の取りつけに失敗する。
 準備して頂いた諸資料に基づいて、帳尻合わせの数値計画はできないことはない。しかし、所詮、すでに現象化した外部データの積み上げであって、その経営者の本心とはかけ離れたものであるから、他を説得する武器にはならない。
 つまり、本人が現状の問題をどのように捉え、内省したのか。今後の見通しについてどれだけ深く考え、その対応に確信をもてているのか。このような、本人の内面的かつ主体的情報が明確でないと、人の心は動かない。
 経営計画を策定するということは、組織的アイデンティティを確立するための原点であることを忘れてはならない。それ故に、トップの哲学が要求されるのであって、陣頭に立って指揮すべきことなのである。
 トップの主体性に欠いた経営計画など、その意味において何ら価値が存在し得ないのである。
 主体性とは、自らが他に及ぼす影響力のことであり、それは自分を支えてくれている環境(社会・地域・組織など)からいかに共感・共鳴してもらえるかどうかである。
 「自らが大河ドラマのシナリオを書き、陣頭に立って指揮をとる以上、これから起きるすべての問題の原因は自分にある。つまり、責任はすべて自分がとる。故に、各自は思う存分に自分の役割を演じきって欲しい」
 このように統合的なストーリーを語り、自らの責任を明確にしてくれるリーダーに、メンバーは安心して身をゆだねようとするのである。
 “主体性”とは、“自分が何を為すべき存在であるか”を知ることであり、それは「自分を正しく知る」ことである。
 それゆえに、トップはつねに「自分を正しく知る」を怠ってはならないと考える。