本文へ移動

考える言葉

 

資質

 
2003年06月02日(月)

 本日(6月1日)、横綱貴乃花の引退試合、断髪式が蔵前・国技館で行われた。引退後、平成の大横綱と評されたが、生まれも育ちも申し分のない、まさに角界のサラブレットであった。
 横綱になってからケガや病気に悩まされたが、それがなかったら角界の大記録(大鵬の32回の優勝、双葉山の69連勝など)をすべて塗り替えてしまうのではないかと期待されたほどで、資質に事欠かない横綱だった。
 現役絶頂のときは、兄で横綱だった若乃花とともに兄弟横綱として名声を博したが、双子山親方の離婚騒ぎ、兄若乃花との絶縁など磐石だった二子山部屋の栄光にも翳りが見え始めた頃から、ケガなども重なり稽古量が減ってきたようで、心身ともにバランスが保てなくなったように思える。
 今年の初場所途中で引退を決めたあとの記者会見でみせた妙にすがすがしい笑顔と語り口は、いまでも鮮明に思い出される。十分に名横綱であったが、稀なる資質であったゆえに天寿を全うできなかったことが惜しまれる。
 いづれにしても、親方としての第一歩を踏み出したわけであるが、資質豊かな第二の貴乃花を育てて欲しいと思う。
 資質とは、生まれつき、天性、素質などの意味がある。私は、資質とは「物事の本質や根本につながっているのが何であるか(基本)を見極めることができる感性あるいは才能」ではないかと考える。
 貴乃花は、相撲が強くなるためには四股、てっぽう、摺足という基本動作がいかに大切であるかを体得していた。マイケル・ジョーダンは、バスケットで一流になるためにはドリブルがいかに大切であるかを誰よりも分かっていた。だから、そのための努力をいつも忘れなかった。
 スポーツに限らない。あらゆる仕事においてもいえることである。一流と言われる人は、一見独特な雰囲気はあるが、物事の基本はしっかりと身につけている。つまり、基本の上に成り立つ個性を天性としてみているのではないだろうか。
 資質がある人は、物事の本質(基本)が何であるかを体得しているから、迷ったときにいつでも原点に立ち返ることができる。それゆえに、傍からみていると、じつにバランス感覚が優れているようにみえて、安心できる。
 人を育てるということは、その人のもつ資質を引き出してあげることであるが、そのためには、物事の基本を仕込み、繰り返し体験させることではないだろうか。
 資質がある人間は、必ずその基本を体得するはずである。多くの一流といわれる人がそうであったように・・・・・。