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考える言葉

 

第三の開国

 
2003年10月06日(月)

 先月、東京・椿山荘で開催されたNN構想・第四回全国大会で基調講演(テーマ:「日本人の心を取り戻せ」)を頂戴した松本健一氏(麗澤大学教授)の話は、大変好評であった。
 氏の著書によると、今、日本は第三の開国の時代を迎えているという。第一の開国は、幕末から明治維新の時期で、第二の開国は大東亜戦争前後の時期を指す。そして、第一の開国のきっかけとなったペリー率いる艦隊が浦賀沖に来航して、明治という新体制ができるまで、たった15年間に過ぎないという。
 維新の立役者となった志士たちの危機意識たるや相当なものだったと思える。その志士たちに多大な影響を与え、精神的な支柱となった思想家の一人に佐久間象山の名を挙げている。
象山の愛弟子には、吉田松陰や小林虎三郎などがいるが、勝海舟の妹は象山に嫁いでいるし、坂本竜馬も海舟の影響を受けてか象山塾に入門したという。
異国の文明や文化を肌で感じ、脅威を感じ取った象山は、「夷を以て夷を制す」ことを決意する。
松本氏は、象山のこの決意の中に日本民族が歴史的に培ってきた“民族としての生きる形(文化)”の本質的な特性を示唆し、第三の開国という大変革の難局に直面し、戸惑い、元気を失っている現代日本人に、「日本人の心を取り戻せ!」と鼓舞したかったに違いない。
「夷の術を以て夷を制す」という気概をマネジメント的に表現すると、「変化のからくりを以て変化を制す」といえないだろうか。つまり、変化の要因を捉え、その変化を自社の中に取り込んで自己変革(=自己成長)を行い、自らが変化の中心になることではないか。
変化を恐れ、逃げ腰になっていては、事態は悪化するばかりである。もちろん、変化を受け入れるということは、過去の成功体験を捨て去ることであるし、容易ではないし、リスクも伴う。それ故に、覚悟がいる。
そのためには、なぜ自己変革しなければならないか、その目的を明確にしなければならない。それは、はっきりしている。企業を支えているのは、顧客である。その顧客の要求に応えきれなくなったところに、低迷の原因がある。
顧客のニーズの変化に応えられるように自らを変革し、さらに顧客の潜在ニーズを掘り起こすレベルまで自己成長することこそ、自らが変化の中心になることを意味する。
今、私たち企業人は、自らの生きる形の維新を求められている。