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考える言葉

 

透明性

 
2004年07月19日(月)

 日産をV字回復させた経営者といえば、カルロス・ゴーン氏。今や、この名前を知らない経済人は一人もいないだろう。
 本屋にいくと、ゴーン氏の経営手法を論じた書籍が氾濫しており、やや食傷気味であるが、サンデープロジェクトにゲストで出ていたのに驚いた。(一番好きの田原氏が、いまさら何で?という意味であるが・・・・・)
 ゴーン氏は何故、短期間で日産の再生に成功したのか・・・・?ゴーン流経営の真髄に迫るといったところか。
 氏が開口一番いったことは、「具体的なプランを持つことだ」という。そのためには、組織を透明にすることが大切であると指摘した。
 不透明な組織は、問題を隠してしまうようになる。問題に蓋を被せてしまうと、短期的には収まってしまうが、長期的な問題の解決にはならず、いずれ取り返しのつかない事態を招いてしまう。
 ゴーン氏が来る前の日産は、縦割り組織のセクショナリズム、事なかれ主義が横行し、モチベーションが低い組織風土になっていた。実は、ゴーン氏は、収益性悪化の原因が内部にあることに、来る前から気が付いていたのである。
 組織の透明性を高めるために導入したのが、すっかり有名になったCFT(クロス・ファンクショナル・チーム)である。つまり、部門横断的な人材を集め、一切のタブーを設けず、徹底して本音の議論を、再生のために集中させたのである。
 組織の透明性が高まるに連れ、メンバーのモチベーションは比例的に高まっていったようだ。もちろん、眼光鋭いゴーン氏が、最初は、強い意志力で場をドンドン引っ張っていったのだろうと想像するのは難くない。
 社員のモチベーションと組織の透明性は、確かに密接な関係があると思う。私が関与しているところでも、数字をオープンにしていない企業は、トップと社員との危機意識には雲泥の差がある。
 社員の危機意識のなさを嘆く社長が最近多いが、数字をオープンにして話し合ったらどうかというと、「それはできない・・・」という。問題に蓋をして、本音の話を引き出そうなんて、できるはずがない。
 日産の再生は、リバイバルのための“具体的なプランを持つこと”から始まったのである。そして、その具体的なプランの内容を決めたのは、CFT導入による組織の“透明性”であったといえよう。
 そして、“透明性”が死んでいた優秀な社員のモチベーションを甦らせたのである。