2003年05月05日(月)
東京・銀座中央通では、フェラガモなど海外ブランド店の進出が相次いでおり、不況知らずらしい。デフレのなか、ルイ・ヴィトンなどは値上げをしたというから消費者も舐められた?・・・、ものだ。
しかしながら、海外ブランドに限らず、強気にはそれなりの理由がある。堺屋太一氏が司会していた“ブランド特集”の番組に出ていた伝統ブランドを守り抜いている代々の経営者達の話には、いずれも劣らず、何か迫力が伝わってくる。その語り口には、自らの商品への想い、情熱が溢れている。
それは、いつの時代においても、顧客の信頼に応え続ける努力をしてきたという自負だと思うが、その弛まぬ努力を支えているのは、独自の経営観(理念)に裏付けられた基本方針へのゆるぎない信念であるといえよう。
大転換期を迎え、過去の延長線上に未来がないといわれる今日、理念経営の必要性が盛んにいわれているが、“理念”とは真理(宇宙のあらゆる存在を根本から支えている原理、自然の摂理)に対しての思考性だと考えるが、企業にとって理念を明確にすることの狙いは何かというと、次の三つがある。(経営人間学講座)
(1)組織の求心力(目的の共有)
(2)環境との関係性の構築(異なるものの統合による価値の創造)
(3)変化への対応(革新、イノベーションの方向性)
番組の中で、伝統ブランドの例として羊羹の「虎屋」や料亭の「嵐山・吉兆」などが紹介されていたが、「伝統を守ることは、革新をやり続けることだ」という信念が、ひしひしと伝わってきた。
自らの商品へのこだわりと顧客のニーズの変化への対応をどのように統合し、価値を創造していくかも重要な経営課題である。
そして、これらのことを永続的にやり続けるためには、組織の求心力すなわち、各持ち場を任された一人ひとりの人間の、“目的の共有”なくしては到底成し遂げられるはずはない。
日本の多くの企業にとって、いまだ、“企業理念”は額縁に入れたお飾りであって、“理念”がもつ本来の価値を見出すことができていない。
一昨年のNN構想・全国大会で、「私にとって“経営理念”は、365日の生き様だ」と、熱く語ってくれた渡邉氏(ワタミフードの社長)の声が、今も心にしみている。
高い思想によって育まれた“信念”こそ、いま、経営者に求められている唯一のテーマではないだろうか。