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考える言葉

 

自得

 
2023年08月21日(月)

 書棚の整理をしているうちに、以前に購入した本を再読することが習慣化してしまったようだ。
毎月、数冊は買っていたのに今年に入って一冊も買っていないことに気がついた。コロナのおかげもあり、読書量が増えたにもかかわらずだ・・・。また、再読するといろいろと気づかされることも多い。
 最近、『道をひらく』(松下幸之助 著)を読み直した時のことであるが、“自得”という言葉に注意がひかれた。
 「自主独立の信念を持つため」には、「“自得”する」ことの重要性を説いている節がある。
 「獅子はわが子をわざと谷底につきおとす。きびしい仕打ちである。だがその厳しさの中で、はじめて自立を会得する。他に依存せず、みずの力で歩むことの大事さを、みずからの身体でさとる。つまり“自得”するのである」と。
 “自得”といえば、「自業自得」という熟語を思い出し、あまり印象が良くない感じがしたので、辞書を引いてみた。
 ① 自分の力で悟ること
 ② 自分自身で満足し、安んじること。うぬぼれること。
 ③ 自分の身に報いを受けること。「自業自得」
 つまり、「他に依存せず、みずからの力で歩むことの大事さを、みずからの身体でさとる、つまり“自得”する」ことである。
 そこで気になり、「自業自得」も調べてみると、「自分がしたおこないの報いを受ける」という意味である。
 「自業自得」といえば、「身から出た錆」と同じで、「自分のした悪いおこないによって、自分自身が苦しむ」という意味で使うことが多いが、本来は、悪い場面だけでなく良い意味でも使える、柔軟性のある言葉だという。
 仏教では、良いも悪いも関係なく、すべての運命が「自業自得」だと教えられているという。つまり、「自分のおこないが自分の運命を生む」という意味だ。これだと、とても合点がいく話だ。
 幸之助氏は、「“自得”するには、きびしさと勇気がいる」と述べている。
 激動する世の中である。経営の舵取りも、決して容易ではない環境である。それゆえに、「“自得”へのきびしい日々を覚悟しよう!」と助言してくれている。
 “自得”・・・・・。言葉一つひとつの意味をしっかりと捉えるようにしたいと思う。





                   ”考える言葉”シリーズ(23‐29)