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考える言葉

 

未来進行形

 
2020年11月30日(月)

 今、『アメーバ経営』(稲盛和夫 著)を改めて熟読させてもらっている。
 その中に、「能力を“未来進行形”でとらえる」というテーマがあり、稲盛さんらしい考え方だと思ったので紹介したい。
 京セラを創業して間もない頃で、稲盛さん自らが何とか受注を増やしたいという一心で客先へ売り込みに行っていた・・・。その頃の京セラは無名の零細企業だったから、大手が断った難しい、面倒な製品の依頼しかなかったらしい。
 難しい、面倒だからといって、それを断ったら、会社はやっていけない。そこで、稲盛さんは、たとえその時点の技術ではできない製品でも「できます」と言って受注をしてきたのだという。
 当然、会社に帰り、技術者たちに話をすると、決まって「とても無理ですよ」と言い出す者が出てきて、みんながやる気を失いかけることもあったらしい。
 そのとき稲盛さんは「できると嘘をついてきた注文でも、決して嘘にはしたくない。懸命に努力して完成させれば、嘘をついたことにはならないのだ。納期まで必死に頑張り、製品を完成させよう」と説いたそうだ。
 今の時点で、どんな難しい仕事であっても、自分たちの能力を“未来進行形”でとらえてチャレンジし、誰にも負けない努力をすれば、何とかなるものである。京セラは、そうやって大きな飛躍を遂げてきたのだと思う。
 思うに、小生にも、ささやかながら“未来進行形”の仕事が多々あった。
 20代の駆け出しの税理士だった頃、お客様ところへ訪問して、税務会計の監査や決算業務をしてたのであるが、一通り仕事が終わると社長に報告を行い、最後に一言、「どんなことでもいいですが、何かお困りごとはありませんか?」と訊ねるようにしていた。
 するとよく、「畑違いかもしれないが・・・」といって経営全般の悩みを話してくれた。
 「わかりました。少し、時間を頂けますか?その件について調べた上で、お答えさせてください」といって、退所する。
 事務所に戻ると、すぐに本屋さんに駆け込み、関連の本を2、3冊購入して徹夜で読破する。そして、朝一番に電話をし、報告をすると大変喜んでくれて、「また今度、頼むね!」といって頂いたものだ。
 “未来進行形”の仕事をして、一番得したのは私だったと思う。新たな知識や経験を増やすことができたし、おかげで職域も広げることができたのである。
 稲盛フィロソフィの一片に触れたような気がして、得した気分である。
 
 
                                               ”考える言葉”シリーズ(20‐45