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考える言葉

 

二十一世紀の企業経営

 
1999年05月10日(月)

 二十一世紀を目前に、時代の潮流は大きく変化しようとしている。

 企業環境の激変は、今私たち企業人にパラダイムの転換を求めている。パラダイムとは、思考の枠組みのことであるが、私たちが今まで信じてきた者の見方や考え方が全く通用しないと言って良いほど、時代は大きく動いているのである。今まで積み上げてきたハウツウやノウハウといった過去の成功体験だけにしがみついたのでは到底存続・発展は望めないのである。

 むしろ、過去の成功体験が未来の失敗の要素となる可能性が高いと言っても決して過言ではあるまい。過去と未来が非連続となる時代である。今までの常識が非常識となる時代なのである。現に、私たちの眼前にその様な現象が次々と現れ、その対応に戸惑い、恐れを抱きながら先行き不透明な経営の舵取りを余儀なくされているのではなかろうか。

 大切なのは過去の幻影を捨て去り、ありのままの現実を直視し、決断することである。変化は避けることのできない時代要請である。変化は二十一世紀を生き延びるためのキーワードだと言える。

 変化が時代のキーワードであるならば、私たちは変化が描くシナリオを、つまり変化が私たちに用意してくれる舞台とはどんなものなのか十分に認識しておく必要がある。歴史的に見ると、変化は必ずと言ってよいほど競争激化を引き起こしている。それは旧い秩序を守ろうとする勢力と新しい秩序を創ろうとする勢力との凌ぎあいでもある。

 そして、あらゆる状況が二極分化していくのである。つまり、変化は成長と衰退という両極の二つのシナリオを私たちに準備しているのである。そして、変化に適応できるか否かによって何れかの道を歩まざるを得ないのである。いつの時代においても、変化に適応できたものが進化し、変化に適応できなかったものが淘汰されていく。変化に適応するためには大胆な発想の転換が必要となるだろう。

 今まで多くの企業では、過去のデータを分析し、ここ数年の傾向を捉え未来を予測するという方法をとってきたが、この分析・予測型の手法では、変化の激しい時代には全く通用しないであろう。また予測しても其の通りには行かないことは、もう誰もが感じ取っていることだろう。今から企業人にとって大切なのは、分析・予測する能力ではなく、時代の変化を洞察する力である。

 小さな変化の根底にある時代の潮流を掴み取り、自らの進路の方向性を見定め、決断する力である。つまり、未来は予測されるものではなく、変化を味方につけて自らが創造していくものでなくてはならない。二十一世紀は、変化に富んだ時代である。変化は時代のキーワードとなろう。その意味において、未来創造型の経営こそ、私たち企業人の目指す方向性ではないだろうか。