本文へ移動

考える言葉

 

真の自立とは何か

 
1999年08月09日(月)

 第2の黒船到来とも比喩されている“グローバルスタンダード(国際基準、実はアメリカ基準とも言われているが…)”の受け入れによって始まった金融ビッグバン、規制緩和の波は、社会構造そのものを大きく変えようとしている。

 戦後日本の経済的豊かさを支えてきた経営システム…終身雇用制、年功序列、銀行主導(借金依存型経営)、談合、政官財癒着の規制行政、系列など、日本的経営の特長とされてきたシステムが崩壊しつつある。その意味において、ビッグバンの本質は社会構造の変革そのものであると言える。

 厳しいリストラのあとにくるのは、実力本位(弱肉強食)の競争原理が強く働くアメリカ型の社会システムになってしまうことは想像に難くない。そんな中で、“自立“ということが盛んに叫ばれ出した。確かに競争激化の中、横並び意識や甘えの構造が通用するとは思えない。

 時代環境は私たちに強く“自立“を求めて来るであろう。そこで、自立とは何を意味するのか考えてみる必要がある。自立と言えば、よく自己責任の考え方を持って生きることだと言われるが、依存状態にある人間が責任を問われても分るとは思えない。

 “真の自立とは何か”を考えるとき、先ず大切なのは“依存している自分を自覚する素直さ”ではなかろうか。依存している自分に気付かず、自己主張(単に我が侭言ってるに過ぎないのだが…)して止まない人間に責任のとり方など分るはずがない。今の日本人に欠けているのは、「自分が他に依存しているという自覚」ではないだろうか。

 自分を支えてくれているあらゆる環境に感謝し、恩に報いる気持ちが在ってこそ正しい自己の成長が可能だと思う。真の自立とは、全体と自分との関わりを正しく認識し、その中から自己の存在価値(役割、使命)を見出すことによって生まれるものではないだろうか。

 河合隼雄先生は「無理して自立の真似をするよりも、人間はいかに他に依存して生きているかを自覚する方がよほどいい」を意味深いことを述べてある。アメリカ基準が決して良いとは思わないが、競争の原理が強く働く時代に突入したのである。変化に適応するしかないのである。

 要するに、自分を見失わないこと。そのためには、常に現在地を見定め、目的を見失わないように生きることである。