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考える言葉

 

全体と個のバランス

 
1999年09月27日(月)

 これからの世の中は全体の秩序が崩れ、個が強くなる時代だと言われている。あらゆる場面で、そのような兆しがすでに見受けられるが、その根本要因は何と言っても“価値観の変化”ではないかと考える。全体を支配していた価値観が崩れ、多様化された個の価値観の反乱である。

 いずれは自己組織化され、全体の秩序の安定を求めて統合化されていくのであろうが、未来不測の変化の時代である。未来の方程式を常に解き続けなければならない企業経営者にとっては、大変難儀な時代だと言えよう。私はこの難しい方程式を解く鍵は“全体と個のバランス”をいかに考えるかにあると思う。結論から言うと、『求心力と遠心力のバランスがとれた組織』をいかに作るかにあると言える。

 そのためには“目的と目標の関係”を明確に捉える必要がある。言うまでもないが、企業は目的によって組織化された集団である。このことは、つまり、組織を構成する一人ひとりが“組織の目的”を共有できたとき、その組織の結束が生まれることを意味している。目的とは個(部分)を組織(全体)の中心へ向かわせる力、つまり求心力である。

目標は組織の目的を実現するための手段であるが、目標は社員一人ひとりが担う役割の分担でもある。目標とは個(部分)を組織の外へ向かわせる力、つまり遠心力である。人は自らが掲げた目標にチャレンジし、その達成に力を尽くすプロセスにおいて自己の可能性(主体性・自主性)を見つけ出し、成長できるのである。その意欲が高い人間であればあるほどその遠心力が強く働き、そしてそれは組織全体の活性化としてより大きく作用するのである。

 ここで大切なのは、強く外へ向かう遠心力(個性)を組織へ引き戻そうとして働く求心力(組織性)との関係である。つまり、理念・目的が明確で魅力ある組織は、当然ながら求心力が強く働くであろう。そして、求心力が強く働けば働くほど、遠心力もまた強く働くのである。安心して戻れる場所あるいは戻りたいと願う場所があるから外へ勢いよく飛び出していけるのである。

 全体と個は常に相互依存関係にある。魅力ある全体(企業)が魅力ある個(社員)を育て、また魅力ある個(社員)が魅力ある全体(企業)を育てていくのである。

 21世紀には、“全体(目的、求心力)と個(目標、遠心力)のバランス”が高いレベルで確立された企業の時代ではないかと考える。