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考える言葉

 

思い切ること

 
1999年10月04日(月)

 多くの経営者が混迷の淵で喘いでいる。今私たちに必要なのは“思い切りの良さ”ではないだろうか。つまり、決心あるいは決断する勇気ではないかと考える。

 半世紀に亘って続いた経済成長期に築かれた多くの神話が崩れ、“大変な時代”であることはもう既に明白である。にもかかわらず私たちは、この現実を直視する覚悟ができないでいる。周知のごとく国家ぐるみで“ツケの先送り”やっているのである。先送りしたツケは必ずさらに膨らむことを忘れてはならない。

 私たちは今、徹底した自己革新に取り組まなければならない。そのためには過去へのこだわり、執着を捨て、未来への手掛かりをはやく探し出すことである。

 過去の成功体験は損を覚悟で切り捨てなければならないだろうし、未来に繋がる太いパイプにはリスクを覚悟でチャレンジしていく勇気が必要とされるであろう。要は、思い切ることである。私は、思い切ることさえできれば、覚悟を決めることさえできれば、人間いくらでも前向きに生きていけるし、チャンスの広がりが大きくなると確信している。

 渋沢栄一翁の「論語算盤説」は有名であるが、事業が成功するには次の二つの事が重要だと考える。

一つは、目的(何のために、存在価値)を明確にすること

二つは、計算(勘定、リスク計算)ができているか

“思い切りの良さ”あるいは“覚悟を決めること”ができる経営者は、この“目的と計算”がキチンと出来上がっていると考えた方がよい。でなければ、真の勇気など持てるはずがないのである。

目的を明確にすることができれば、思考と行動の方向性がはっきりとしてくるのである。為すべき事と為すべきで無い事がはっきりしてくるのである。計算ができたということは、勝算を得たことを意味する。未来に向かってチャレンジする勇気を持てることでもある。

 自社のあるべき姿(事業計画)を納得行くまで考え抜き、自分の未来を描き切ることである。今やこのことは、トップと幹部の為すべき最重要課題である。自らの手で活路を切り開かなければ、生き残れないのである。今、企業において“ツケを先送り”することだけは避けなければならないと思うのである。