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考える言葉

 

ディスクロージャー(情報開示)

 
1999年12月27日(月)

 ソフトバンクの孫正義社長が、「ナスダック・ジャパン構想」を打ち出して日本の証券市場をあっと驚かせたのが今年の6月だったと思う。当初の構想で「2000年中」の開設を予定していた。大方の予想ではかなり難航するのではないかという意見であったが、意外にも大阪証券取引所と共同で創設することで合意し、「来年6月から売買を始める」と正式発表があった。

 ライバルとなる東証の「マザーズ」が順調な滑り出しを見せていることもあるが、時代の流れに乗ると追い風が吹くものだ。日本の株式市場も、これで「フリーでフェアでグローバルな思想を持った市場」(孫氏)へ生まれ変わるための一歩を踏み出したことになるのだろうか。大いに期待したいものである。

 金融ビッグバンにより今、日本の経済構造はあらゆる面で大きく変わろうとしている。私たち中小企業にとって最も厳しい変化として認識すべきことの一つは、「銀行依存型の借金経営」からはやく脱却しなければ企業の存続すら危ういという事実である。資金調達の方法の見直しは経営の急務である。銀行依存の間接金融から自ら資金を集める直接金融の時代へとなる。

 このような変化への適切な対応をするためにも、経営者は財務に対するしっかりとした見識が必要となろう。財務の抜本改革、財務の戦略性が問われる時代であることを深く考えてもらいたいと思う。先ず大切なことは、“ディスクロージャー(情報開示)”の重要性が高まることへの正しい認識。

 これからは自己責任の時代である。その前提には情報開示の充実が必要となる。利害関係者に対する“正しい報告”、あらゆるリスクを開示することが出来ない企業は社会的信用を失い、存続の危機に瀕する事態が生じるであろう。それから“プレゼンテーション(未来への提言)”の充実である。自社の進路の方向性を明確にし、いかなる価値の創造によって貢献しようとしているのか“あるべき姿”を描き切る必要がある。

 過去のリスク計算を明確にした決算書の作成と未来のリスク計算をした経営計画を作成できる経理体制の確立が急がれる。つまり、経営の意思決定に役立つ企業会計を構築していきたいと考える。新しい価値を創出する企業にとって有利なステージが着々と出来上がりつつある。と同時に、独創性の乏しい、自らの力で成長していこうという意欲のない企業にとっては大変厳しい時代になったということができる。