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考える言葉

 

防衛本能と限界の関係

 
2000年01月11日(火)

 某紙の新春対談の中で、「スポーツ記録はどこまで伸びるか」という質問に対して、元スケート選手黒岩彰さんが大変興味深いことを語っている。

 「…スケートの五百?は世界記録がある時期、停滞した。でも、ある時一人がその壁を超えると、他選手の記録もドーッと伸びることがありました。何だ、あいつが出せるんだったらおれだって、っていうわけです。「火事場のばか力」っていうけど、それが本来は人間の力なわけです。でも、人には防衛本能がある。そんな力を出したら、けがをしたり、死んでしまったりする場合があるから、自分の限界を早めに決めてその手前でやめてしまう。コーチ時代、ペダルの重い自転車を使って「これ以上はこげないと思ったら手をあげて合図しろ」といって練習させた。ところが、手があがってから「よし、あと10秒」というと、これが頑張れるわけです。さらに、「あと5秒」というと、またやれる。そこで、「おまえ、もうだめだって言ったけど、そこからペダルを踏んでた最後の15秒っていったい何だろう」って話し合いました。ぼくは限界というものを設けた時点で、それが限界になるんだと思う。動機づけさえうまくもっていけば、記録の限界ってないんじゃないですか」…・・。

 大変示唆に富んだ話で、私たち個人あるいは組織の成長を考えるにあたって、多くの気付きを学ぶことができる。

1)人間のもつ自己防衛本能の意識がその人の限界に大きな影響を与えているということ
2)組織において、壁を打ち破る者が現れるとそれに続く者が必ず出てくるということ
3)個人あるいは組織の成長において、リーダーの“動機づけ”がいかに大切であるかということ
4)「火事場のばか力」こそ、人間の本来の力であり、気持ち次第で限界はないということ
5)どこまで自分を鍛えられるか、それに挑んでみようというチャレンジ精神がいかに大切であるかということ

 私たちは、自分では一生懸命やっているつもりでも知らず知らずのうちに自己防衛本能を働かせて、自らの成長に限界というものを設けてしまっているのではないだろうか。

 考えるに、実にもったいない話である。