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考える言葉

 

“ジャパンアズナンバーワン”の反省

 
2000年06月12日(月)

 1970年代の後半、アメリカがベトナム戦争の後遺症に悩み、日本が世界経済を席巻し始めた頃、アメリカの社会学者であるエズラ・F・ヴォーゲル博士が「ジャパンアズナンバーワン」という本を書いて、ベストセラーになった。

 戦後アメリカに追いつき追い越せを目標に走ってきた日本にとって、その本のタイトルは衝撃的で、「“日本もここまで来たか”という優越感と同時に、アメリカを刺激し過ぎるのでないかと言う“得たいの知れない怖さ”」を感じた記憶がある。今の日本の状況をみると、その予感が現実になったと言えなくはない。

 そのヴォーゲル博士が、最近「ジャパンアズナンバーワン“それからどうなった”」という本を出した。
博士によると、日本経済バブル崩壊後の講演活動で、必ず「ジャパンアズナンバーワン」を書いたことを後悔していないかという質問を受けるそうで、その反論もあって今回の出版になったという。

その内容について、興味深い部分をいくつか紹介したい。

 当時の日本は、時代の変化に適応することに常に挑戦的だったし、意欲が旺盛であった。しかし、欧米諸国に追いつくことに成功した後、日本はグローバリゼーションという新しい適応を迫られてきたにもかかわらず迅速な適応を怠ってしまった。

 要するに傲慢に陥ったことが、今日の敗因を招いているのではないか、それと20年前とすると日本人の士気がかなり低下していることが気になるという。

 しかし、今でも経済を一流の押し上げてきた日本の美徳や才能といった基礎条件は、世界のどの国よりも優れたものが残っているという。

 ただ、構造改革のテンポがあまりにも遅い。急激な成長を望むならば、明確なヴィジョンとリーダーシップを発揮できる利害に拘束されない政治家を育てることと大学を中心とした教育制度の改革が急がれると、指摘している。

個々の企業のあり方についても、大変含蓄のあるアドバイスではないだろうか。

傲慢や慢心はどんな状況においても命取りになる。成長の最も大きな阻害要因となる。
 
 経営者は、いつも時代の変化に適応できるように柔軟な考えを持って、自己革新を怠らないようにしないといけないと思う。
 そして、今大切なのは未来に対する明確なヴィジョンを指し示し、強力なリーダーシィップを発揮することであろう。
 そして、時代のニーズに適応できる社員を育てることに熱意を注ぐことが急務と考える。