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考える言葉

 

迷走

 
2000年07月17日(月)

“目的(理念)を見失った組織は迷走する!”という言葉の意味を改めて考えさせられる1週間であった。
毎日のごとくマスコミを賑わせた雪印乳業による集団食中毒事件や大手百貨店そごうの経営破綻のニュース。名門といわれた企業に何が起こっていたのか。
その実態はさらに明らかにされてくると思うが、今回の事件は、いずれの場合にも、その根底には経営陣の見識のなさによるミスリードあったように思えてならない。
そして、そのミスリードが起きた具体的要因として次のようなことが考えられる。
(1)責任観念の欠如
(2)危機管理の欠如
(3)企業モラルの欠如
戦後の日本は、長い間、経済的豊かさを何よりも優先させて経済発展を遂げてきた。それは、企業の利潤追求にとっても都合の良い環境であったとも言える。
相手(顧客・社会など)の立場を深く考えなくとも、効率良く稼げるシステムを作りさえすれば成長できた。自分の“そろばん”さえ弾いておれば、経営が出来たのだろう。
そんな甘い汁ばかりを吸って、要領良く出世した経営陣にとって、「お客様に喜んで頂ける品揃え」「お客様に安心して頂けるための品質管理」などの企業理念も単に社交辞令に過ぎなかったのだろう。
そんな状況では、“奢りの罠”に陥ること必至。
今回の事件は、私たち経営者にとって他山の石とすべきである。「正しい経営とは何か」という“経営の本質”を問い直す絶好の機会とすべきであろう。
企業とは“目的のために組織化された集団”である。つまり、目的(理念)を明確に掲げ、その実現のために働く集団だと言える。
その目的を見失ってしまっては、“迷走すること”至極当然といえよう。雪印の経営陣が、「原点に立ち返って、出直したい」と語っていたが、「原点に立ち返るということは、目的をはっきりさせること」だと、ご存知なのだろうか?
私たち経営者は、自社に掲げている経営理念を決して形骸化させてはならない。組織の隅々までしっかりと浸透させ、根付かせる必要性を改めて自覚したいと考える。
戦後の日本を形成してきた経済至上主義というパラダイム(思考の枠組み)が崩れ
た今、混沌とした時代環境の中で生き延びていくためには、企業は自らの座標軸を早急に確立すべきである。