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考える言葉

 

未来から見る

 
2000年10月30日(月)

 今という視点から過去を振り返って見ると、その時には到底気付くことが出来なかったであろうと思われる様々なことが良く分る。勿論だからと言って、仕切りなおしをしてやり直すことは残念ながら出来ない話である。

 しかし、人間は何故“過去を振り返ること”ができるのであろうか。当然のことであるが、過去に立ち返って知覚的に検証するという行為は、タイムマシンでない限り不可能である。
 それは、人間の持つ想像力が為せる技である。つまり、“過去を振り返る”という行為は、想像力を使って過去のある場面を再生し、イメージを心に思い浮かべているのである。

 想像力とは“時空を超えた思考ができる力”だと呼んでも良いだろう。過去だけではない、未来にも自由に羽ばたくことができる翼を持っている。
今、私たちに大切なことは、この想像力という翼を広げ、自分の未来を思い描いてみることではないかと思う。

 ある社長に「経営計画を作って、自社の3年後あるいは5年後のあるべき姿を鮮明に描いてみませんか」と提案したら、「重要なことは分るけど、目先の事に追われているのに、そんな未来を描いても、絵に描いた餅だ」という。

 果たしてそうだろうか、私は逆ではないかと思う。何故かというと、近い未来は過去に縛られるが、遠くなればなるほど未来は過去と無縁になるからである。
 仮に「支手決裁に追われるような資金繰りをしたくない」と考えたとしよう。しかし、数ヶ月先までの手形を出している以上は、逃れられない。今、手形取引は一切やらないと決意し、そのような資金繰りの改善を断行したとしよう。3年後には、支手決裁に苦しむことはあり得ないのである。

 未来は、今何を考えて行動するかに決定されるのであって、本来、過去とは無縁だと考える。だからこそ、過去に縛られないしっかりとした未来を私たちは描くべきだと思う。

 今という視点で過去を振り返ると様々なことが良く分ると言ったが、同じように「未来から現在を見る」という視点が、激変という現在を生きる私たちには大切なような気がする。