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考える言葉

 

良い質問

 
2000年11月13日(月)

 フランスの物理学者パスカル(1623~1662)は、「人間は“考える葦”である。それ故に偉大である」と言った。

 時代の大きな流れに翻弄されそうなこの時期、今まさに人間のもつ思考力が問われる時代になったのではないかと思う。
 企業経営においても、企業を取り巻く環境の変化とそのスピードは速く、ハウツー的な知識やマニュアルに依存した仕事のやり方では、さほど成果は得られなくなっている。つまり、過去の成功体験が通用しなくなっていると言えよう。

 現場に及ぶ1人ひとりの人間が“自分の頭でしっかりと考える”ことができる組織に生まれ変わらないと、業績の向上は難しい。

 C・Hケプナーは「問題解決や意思決定を行う場合に必要なのは、やみくもに情報を収集することではない。どのようなアプローチで、どんなプロセス(手順、段取り)で思考したら最も効果的であるかを判断する能力なのである」と述べている。

 そして、マネジメント思考には“五つの思考モード”があり、状況に応じてそれぞれの思考モードの選択あるいは組合せによる活用によって、思考レベルの向上が図れるとしている。さらに、部下に対して“五つの思考モード”に従って、次のような質問を常に心掛ければ、部下の思考の幅が広がり、思考能力の向上に繋がるとしている。

 (1) 何を見たのか?事実は何か?(第一の思考モード、「事実ベースのラショラル思考」)

 (2) この問題について何を知っているのか?どんな情報を聞いているのか(第二の思考モード、「知識ベースのラショナル思考」)

 (3) あなたの感性から何が言えるか?(第三の思考モード、「直観思考」)

 (4) 最適な解決策として何が想定できるか?どんな未来問題が予測できるか?(第四の思考モード、「想像力思考」)

 (5) この問題解決を妨げるようなことは、他にないか?(第五の思考モード、「交渉型思考」)

 このように適切な質問を部下に投げかけると、その思考モードで考え始める。自分の頭でしっかりと考える人材を育てるには、上司は部下に対して「答えを授けるのではなくて、良い質問を投げかけること」が大切である。

 良い質問をすることができる人は、“考える人材”を育てるのが上手い人と言えるのではないだろうか。