本文へ移動

考える言葉

 

二律背反

 
2001年07月30日(月)

 去る(7月20~22日)ジェノバで開催された主要国首脳会議(サミット)は、過激なデモ攻勢にさらされるなど今までにない異様な雰囲気の中で幕を閉じた。

 ジェノバの誤算がいろいろと取り沙汰されたが、最も大きな誤算は二律背反する諸問題に対して何ら解決の糸口を見出せないまま先送りせざるを得なかったことではないだろうか。

 グローバリズムと反グローバリズム、成長と環境破壊、相反する国益(米欧間の主導権争い)、覇権主義と反覇権主義・・・・・。

 二律背反とは、相反すること、矛盾。平たく言えば、「こちらを立てれば、あちらが立たない」という状況に陥ることであるが、何も国家間の問題だけではない。
企業経営における意思決定は、常に二律背反性の問題に突き当たると言っても決して過言ではない。特に、経営者が抱えている今日的課題の多くは、今までのような二者択一的な解決を許さない状況にある。

止揚(アウフヘーベン)という言葉があるが、過去の経験に囚われることなく柔軟な発想ができないと、ブレイクスルーできないだろう。

つまり、私たちは思考の着眼点を変えてみることが大切だと思う。

(1) 目的思考で考えること
「迷ったら原点!」、つまり、目的(何のために)を問うことから始めること。目的と手段・方法を混同するようなことがあってはならない。

(2) 未来思考で考えること
未来に軸足をおいて考えること。10年後に今のままで存在しえるのか。過去の成功体験やしがらみを捨て、柔軟な発想。目先の利益に目を奪われていないか。

(3) 統合思考で考えること
 開放系(オープン)であること。ネットワーク(関係性)であること。相手本位(利他的思考や行動)であること。自分と他人を分けて考えてはいないか。分離や排除の考え方に縛られていないだろうか。

 しかし、もっと大切なことは自らの低い価値観(思考の枠組み)を捨て去り、自らが生まれ変わる覚悟ではないだろうか。

 自らの思想性を高め、高い価値観を習得できるならば、自ずと考え方が「目的・未来・統合的な思考」となり、二律背反的なジレンマに陥ることはないだろう。

 脱近代という新しい時代のうねりの中で、自分の頭でしっかりと考えることができるようになるためにも、思想教育の重要性を痛感する。