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考える言葉

 

顧客本位

 
2001年09月03日(月)

 右肩上り経済の終焉と共に、企業経営の常識は180度、ごろっと変わってきている。
多くの企業が突然、仏心を得たかのように「顧客第一主義(相手の立場に立つこと)」を理念として唱えるようになった。その背景に立場の逆転現象がある。
 企業エゴから脱却し、自ら悟りの境地に達したからだろうか、決してそうではないだろう。もう、企業本位の考え方では「モノが売れない」からである。
 何故か?答えはハッキリしている。「市場の自由化・情報化」の波は、熾烈な競争の原理をもたらし、価格にしても情報にしても、もはや企業にとって都合がいいようにコントロールできる時代ではなくなったといえる。
 つまり、消費者(顧客)優位の市場が出来上がりつつある。その意味において、企業が顧客中心の物の考え方に立つこと、つまり、「顧客本位」の戦略を取ろうとしていることは間違ってはいない。いや、むしろ、そうしないと生き延びていけないことは、誰もが薄々感じている現実である。
 しかし、「顧客本位」の経営をするということは、口でいうほど容易なことではない。何故ならば、過去の成功体験であるノウハウやハウツウを学ぶが如く能力的学習で身につくものではないからである。それは、企業風土、それを根底で支える経営者の“価値観の反映”だからである。
(1)「顧客本位」という考え方の本質とは何か
(2)それを自社においてどのように具現化するのか
(3)そのためには、どのようなリスクを覚悟しなければならないのか
(4)そして、「顧客本位」の考え方によって、組織はどうのように変わるのか
 恐らく、これらの問いに自分の言葉で説明できる人は、そう多くはないだろう。ましてや、それを組織に浸透させるとなれば、とても小手先ではできない話である。
 21世紀において、私たちがさらに成長していくために、どうしても乗り越えなければならない壁がある。
 それは、「自分本位」の考え方、つまり、自己中心的な生き方をしている“自己の価値観”である。
 それを超えることを“時代の価値観”が要請している。「顧客本位」で考えないと「モノが売れない」という現実は、まさに、「顧客の利益」と「自社の利益」を統合(一致)するためにはどうしたらよいのかを真剣に考えるチャンスを与えてくれているといえよう。
 この問題を解決するには、その人の思想性が問われることになる。(経営人間学講座)