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考える言葉

 

リスク計算の徹底

 
2001年10月22日(月)

 構造的変化による不況が長期化する中で、企業会計の重要性が改めて問われている。
 明治のはじめ財界の大御所として、日本の社会的事業と教育の礎を創るために活躍された渋沢栄一先生は、事業が成功するためには、その事業の“目的と計算”を明確にしなければならないと教示している。
 企業会計の「会計」とは、まさに、「計算」であり、その事業が成功するかどうかを計数的に把握し、管理することである。
 事業には必ず“リスク”が伴うものであり、その“リスク”対応のいかんが、その事業の命運を分けている大きな要因の一つであるといえよう。
 今、多くの企業が“リスク”に潰されようとしている。それは、“リスク計算”の徹底がなされないまま、事業をやり続けてきた結果である。
 変化の時代は、バランスが崩れる時代であり、“リスク”とはバランスが崩れた状態を言うのである。そして、バランスが崩れるとき、企業に新たな“成長のシナリオ”が萌芽するときでもある。その意味において、「変化はリスクであり、同時にチャンスである」といえる。
 企業会計における“リスク”は、大きく次の二点から捉えることができる。
(1)収益構造のバランス
 損益計算書を分析・検討することによって、儲ける仕組みの構造が、どの段階の利益でバランスを逸しているのかを観る。
(2)財務構造のバランス
 貸借対照表を分析・検討することによって、支払手段や長期的安定の構造が、資金の運用(資産)と資金の調達(負債と資本)でどのようにバランスされているかを観る。
 さらに、収益構造と財務構造の相互バランスのとれた成長を考えるためには、常に「利益と資金と自己資本」の数値の整合性を考慮に入れて、“リスク計算”を徹底しなければならないと考える。
 このような観点から、過去において生じた“リスク”を浮き彫りにするのが決算という作業であり(過去会計)、未来に向かって成長・発展するために新たに背負うべき“リスク”の意思決定を行うのが経営計画である(未来会計)。
 当然のことながら、“リスク”に潰されることなく、「リスクはチャンスである!」と確信するためには、“リスク計算”を徹底して行い、先ずは“自分の実力”を見極めることではなかろうか。
 “リスク”を見切ることができれば、「百戦危うからず」である。