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考える言葉

 

理念の浸透

 
2001年12月25日(火)

 以前にも紹介したが、居食屋・和民の渡邉社長(「青年社長」(高杉良著)の主人公として小説化されている)は、「理念とは、365日の自分の生き様」と言い切った。
 次年度の行動計画書を作成するこの時期になるといつも、創業当初に掲げた経営理念について、様々な視点から検証をすることにしているが、今年は気がかりになったことが二点ある。
 一つは、冒頭の渡邉社長の言葉にある「365日の生き様」、人様の前で理念に対してそこまではっきりと、自分は言い切れただろうか。つまり、理念に対し日頃、どれだけ意識し、実践的であり得ただろうか。また、トップとして理念を組織に浸透させるために、どれだけ熱意と信念を持って、伝えるための行動を成し得たのだろうか。
 二つに、時代のパラダイムが大きく動こうとしている今日、18年前の創業時に創った理念が価値あるものとして存在し得ているのであろうか。つまり、根本から見直しをする時期に来ているのではないだろうか。
 毎日、朝礼時に全員で経営理念の唱和を元気な声でしているからといって、一人ひとりの心に響くものでなければ、形骸化した経営理念を壁に掲げている多くの企業と何ら変わるものではないだろう。
 本来、企業が自社の経営理念を策定する狙い(目的)として、次の4つのことを挙げることができる。(経営人間学講座)
(1)組織に求心力をつくるため
(2)異なる価値を統合し、新たな価値を生み出すため
(3)自己革新をし続けるため
(4)組織の目的を共有し、仕事の喜びを分かち合うため
 だとすれば、上記のような成果が生まれていないとすれば、経営理念を根本から見直してみる必要が生じているといえよう。
 時代のパラダイムが大きく転換しようとしている21世紀において、企業は抜本的な戦略の転換を求められている。しかし、理念なき企業は戦略をつくる術を持ち得ないのである。
 経営理念は、組織が進むべき方向性を見定める指標となる。組織の未来を描く中核をなすものである。つまり、理念なくしてヴィジョンも戦略も描けないのである。
 「求心・統合・革新・共有」なき組織は、大競争の時代を勝ち抜くことはできないだろう。
 今や、経営者にとって“理念の浸透”は、経営の最優先課題である。