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考える言葉

 

アド・リブ

 
2002年01月21日(月)

 「この頃は、予測できないことが多過ぎる」と、ある社長の実感。つまり臨機応変な対応が企業人に要求される時代である。
ジャズの即興的な演奏や台本にないせりふを即興でしゃべるのを“アド・リブ”といっているが、変化が激しく予測ができない今日的状況は、ある意味において“アド・リブ社会”だといえる。
つまり、大筋を捉えたら、あとは流れの中で臨機応変に“切れの良いアド・リブ”をいかに利かせることができるかどうか。これが、けっこう難しいのである。
 “アド・リブ”といえば、関西の天才的な漫才コンビだった“ヤス・キヨ”の演技を思い浮かべる。個性豊かな二人から突いてでる“アド・リブ”は、天下一品だった。
それは、二人の才能の豊かさも然ることながら、「芸人は、客の笑いをとってなんぼや」という強い想いを共有していたし、そのためにはお互いの才能を殺し合うのではなく、生かし合うことの必要性を肌で感じ取っていたからであろう。
 肌合いが全く違う二人ではあったが、「客の笑いを取る」ためには、お互いを必要とする関係であることを認識していたし、弛みない訓練と実践を通してコンビで芸をやる術を身につけていたといえる。それゆえに、“ヤス・キヨ”の漫才は、客をも巻き込んだ一体感の感動があった。
私たちの多くの仕事は、様々なコンビネーションにおいて成り立っている。それに変化という要素が加わったならば、いつも筋書き通りと言うわけには行かない。
場の雰囲気を呑み込んでしまうくらいの“アド・リブ”が出せるようでないとプロとはいえないし、生き延びることも難しい時代である。
(1) 互いにプロ意識に徹していること
(2) ともに生かし合うこと(協働性)
(3) 目的の共有がなされていること
(4) 信頼関係ができていること
(5) 競争の原理が働いていること
以上、共同で仕事をしている環境の中で“アド・リブ”が効果を出すための要件として挙げることができよう。
一人ひとりが、しっかりとした仕事の基本を身に付け、場数を踏むことによって得られる応用。それを組織プレーの中で生かす術を身につけてこそ、絶妙な“アド・リブ”が、生まれるのではないだろうか。
“アド・リブ”効果が出せてこそ、一流の仕事師といえる。