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考える言葉

 

「増やすこと」

 
2002年11月25日(月)

 某週刊誌によると、この冬のボーナスは史上最悪になりそうで、10~20%「減額」は当たり前だという。
 デフレ不況がいよいよ賃金を直撃し始めたと言うことだろうが、中小企業のボーナス事情はもっと以前から厳しい状況にある。
バブル崩壊後、土地の下落などが始まりデフレが意識され始めた頃、「最後には賃金に及ぶ」とある人がいっていたような気がする。だとすると、この冬のボーナス異変はこれからもっと深刻になる前兆だといえる。
業績回復の見通しも立たず、売却する資産も底がつけば、ボーナスに手をつけざるを得ない。当然といえば、至極当然の結果である。
考えてみると、私たちは業績が悪くなると、その改善を図るために人減らしをしたり、経費を削減したり、資産を売却して借金を減らしたりと、決算書の中から無駄な数字を探し出し、「減らすもの」に赤鉛筆でしるしをつけることに専念する。いわゆる、リストラである。
リストラ(減らすこと)とは、このように赤鉛筆で過去の失敗を正そうとするだけであって、決して未来を展望する行為ではない。そして、究極のところ人減らしに終始することになる。
今、私たちが為すべきことは、「減らすこと」だけではなくて、むしろ「増やすこと」を真剣に考えるべきではないだろうか。「増やすこと」が大前提にあって、「減らすこと」を手掛けなければならないと考える。
つまり、「増やす」とは、業績(利益)や人材(人員・人件費)や投資(資本)を「増やすこと」である。当然ながら、これは簡単ではないし、“リスク“も伴う。
それゆえに、未来についてもっと真剣に考えるのではないか。それに過去の失敗は他人のせいにできても、未来についての意思決定は自己責任である。
今、多くの経営者が抱えている悩みは、“未来への見通し”に対してである。しかし、自社の未来(ヴィジョン)を描くのにどれだけの時間を使っているだろうか。不思議なことであるが、ほとんど使っていないのが現実である。何故だろうか?「減らすこと」を考えても、「増やすこと」を考えていないからである。
繰り返していうが、「減らすこと」とは過去の清算に過ぎない。「増やすこと」は、“リスク”が伴い難しく、時間もかかるが、それだけ真剣に考えるし、衆知も集まる。そして、何よりもそこには“未来”があり、夢も語れる。
今、「増やすこと」を決断することは、究極の未来思考ではないだろうか。そして、誰もが望んでいることでもある。