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考える言葉

 

目標管理

 
2003年03月03日(月)

 「目標管理」という概念がマネジメント手法として、私が学生の頃に「行動科学の経営論」のなかで学んだ記憶があるのだが、日本に紹介されてから久しい。
 “考える言葉”シリーズ(03-07)で紹介したように、長崎で開催した“経営人間学講座入門篇”のテーマが「統合の原理に基づく目標管理」だったので、「目標管理」の意味を改めて捉えなおして、考えてみたい。
 経済辞典(有斐閣)によると、「目標管理(management by objectives):MBO」とは、「企業などの組織体構成員が、その担当職務にそって具体的達成目標を設定し、その実現に努力し、その成果を自己評価することで組織体の目的達成に役立てるとともに、働く人々を動機づけるシステム」とある。
 つまり、その要諦は、目標(=成長の内容、プロセス)をテーマとして“組織の目的”と“個人の生きがい”を統合的に実現しようという、まさに統合のシステムであるといえよう。(講演において、お上人が、ご指摘されたとおりである)
 このように考えると、私たちは、「目標管理」というマネジメント手法そのものが本来、“組織と個人との統合”という、かなり思想性の高いものであったことを窺い知ることができよう。
 にもかかわらず、このシステムの背景にある思想性を無視し、テクニカル的なマネジメント手法として導入しても、混乱を招くだけで、成果がでないのも道理である。
 「目標管理」が成功するためには、次の3点において少なくとも条件づけられていなければならないと思う。
(1)組織の目的(存在の価値、ドメイン)が明確になっていること。
(2)組織において、プロセス管理(Plan-Do-See)の制度が  確立されていること。
(3)個人の価値観が統合の思考(自他非分離、システム思考)を確信  していること。
 そして、(1)と(2)の客体化された組織のあり様と(3)の主体的・自発的な個人の意識が有機的に統合されている必要がある。
 講義の中にもあったように、変化の激しい時代は、変化に順応するだけでは生き残れない。自らが新しい環境を創造していかなければならないのである。そのためには、思想的に正しい目標管理を導入することが経営の重要な課題であるといえよう。
 「目的と目標」は、人間の思考によって創造された価値である。そして、思想は、人間の思考力を高めるための“規矩(コンパスと定規)”の役割を果たしてくれる。
 今、乱世を生きる私たちが、「経営人間学講座」を学ぶ最大の理由の一つは、ここにあるのではないだろうか。