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考える言葉

 

5つの大罪

 
2022年06月06日(月)

 「立派な企業が長期低迷に入る。いずれの場合も主たる原因は、事業上の“五つの大罪”の少なくとも一つを犯したことによる」
 “五つの大罪”とは、立派な企業が長期低迷に陥る主たる原因について、ピーター・F・ドラッカーが指摘した有名な洞察である。
 ① 第一の大罪は、利益幅信奉である。
  開発した製品が売れ出すと、必要以上に新しい機能を追加して利益幅を拡大する。そこに、シンプルな機能で低価格な競争相手が参入し、市場を奪われてしまう。
 ② 第二の大罪は、高価格信奉である。
  これもまた、競争相手を招き入れる結果となる。
 ③ 第三の大罪は、コスト中心主義である。
  ほとんどの企業が、コストを積み上げ、それに利益幅を上乗せすることによって価格を設定している。その結果、競争力を失ってしまう。
 ④ 第四の大罪は、昨日崇拝主義である。
  これは、昨日を重視し、明日を軽んじるという意味である。その結果、時代の変化、流れを見失ってしまう。
 ⑤ 第五の大罪は、問題至上主義である。
  問題にばかり気をとられ、機会を見失ってしまうことだ。
 以上が、ドラッカーが長期低迷に陥る原因として指摘した内容であるが、いずれも思い当たる節が多分にあると思う。
“五つの大罪”の内容を吟味してみると、共通して言えることは、顧客第一主義と言いつつも、自社都合を優先してしまった結果ではないだろうか。
 現状におけるアフターコロナ対策もそうであるが、時代環境の変化に伴う国内外の競争激化がさらに強まることは避けられないだろう・・・。
 そうした中、多くの企業において戦略の見直し、立て直しが必要とされているという。
その時には、事業の再定義からはじめて、上記“5つの大罪”を考慮しつつ、顧客の視点から戦略・戦術を展開していくと、有意義なものになるのではないだろうか。
 ドラッカーとの最初の出逢いは学生の頃だから、もう50年以上も前になる。書棚にあるドラッカー本を一冊ずつ、丹念に読み直しているが、その内容に陳腐化は感じられず、改めて考えさせられる内容ばかりである。 不朽の名作という言葉があるが、経営本において朽ちることがないということは、社会と人間の本質をついた内容であるからだろう。ドラッカーが「現代社会最高の哲人」と言われる所以であろう。

 
                   ”考える言葉”シリーズ(22‐22)