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考える言葉

 

NIH症候群

 
2022年08月29日(月)

 コロナ禍の日常性が長く続く中、最近気になるのは、コロナが収まったあとの世の中はどう変わるのだろうか、であろう。
 そんなことを思いながら、ドラッカーの書物を読んでいると、次のような文章に出逢った。
 「アメリカの言葉に『NIH』(Not Invented Here)というのがあるが、アメリカで発明、発見、製造されたものでないものは取り上げるに値しないというこのような高慢な態度は、間違った習性の一つである」と。
 “NIH症候群”(Not Invented Here Syndrome)とは、「ある組織や国が別の組織や国(あるいは文化圏)が発祥であることを理由にそのアイデアや製品を採用しない、あるいは採用したがらないこと。またその結果として既存のものとほぼ同一のものを自前で再開発すること」をいう。端的に、「自前主義」ともいうそうだ。つまり、自分が考えたものが一番よいという思考である。
第二次大戦後、名実ともに世界の経済を引っ張っていく立場になったアメリカ・ビジネス界の傲慢さゆえの過信に対して、危機感を感じ、反省を促すための警鐘だったのだろうと思う。
 そう言えば日本も、戦後の復興期を経て55年体制が整ったあとに続く高度経済成長期(55年~73年)を終え、80年代初頭には『ジャパン・アズ・ナンバーワン』(社会学者エズラ・ヴォーゲル著)という著書も出版されて、絶頂期を迎えた感があったが、
その後、「ジャパンバッシング」(日本叩き)が起こり、1990年代のバブル崩壊への道を辿ったのは承知の事実である。 (注) 参考までに、「1955~57年(神武景気)、1958~61年(岩戸景気)、1963~64年(オリンピック景気)、1966~70年(いざなぎ景気)」と呼ばれていた。
 さて、話をコロナ後の世界に戻そう・・・。
 よく経営者の人たちから、「コロナさえ収まれば、業績は元に戻るだろう」という期待的な観測である。つまり、今の業績(売上や利益)の落ち込み、低迷はコロナ環境だからだという。
 果たして、そうだろうか?否だと思う。
 よく20世紀は「科学の時代」であったと言われる。つまり、科学の発達が世の中の進化を支えてきたと・・・。21世紀は、大きな変革の時代であるという。20世紀という過去の延長線上ではない「時代のキーワード」が問われているのではないだろうか?
 時代の価値観が求めているものは何か?それを虚心坦懐に問うてみたいと思う。
 
                   ”考える言葉”シリーズ(22‐33)