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考える言葉

 

だまし絵

 
2022年10月17日(月)

 “だまし絵”といえば、昔、流行った「娘と老婆」を思い出す。一枚の紙に描かれた一人の人物が、画面奥に顔を向けている若い女性と横顔を見せている老いた女性の二通りに認知することができる絵である。
 19世紀からある古い絵で、作者は不詳だそうだ。その後、イギリスの漫画家W・E・ヒルによって改作され、アメリカの雑誌に掲載され出版されたという。ベストセラーになった「7つの習慣」では、パラダイムの概念を簡潔に説明するために引用されている。
 要は、見方を変えることで、同じ物でも違ったふうに見えてくるものだという認識を持ちたい。
 さて、物事にはどんな見方があるだろうか?
 例えば裏側から見る、宇宙から見る、虫眼鏡で見る、分解してみる、百年後に見る、赤ちゃんの視点で見る、神の視点で見る、色を変えてみる、大きさを変えてみる、二次元にしてみる、素材を変えてみる、他の人の気持ちになってみる・・・。
 『7日間で突然頭が良くなる本』の著者である哲学者・小川仁志氏は、その著書の中で「100通りの物の見方をして頭をほぐすこと」を提唱している。
 物事の本質をつかむためには、複数の側面から対象を眺めることが大前提であるとし、頭のよい人は皆それが得意なのだという。つまり、いろいろなものの見方ができるのである。よく、柔軟性(flexibility)のある人だと表現する。
 ポイントは、頭をほぐすことである。そのためには、次の2点が肝要となる。
 ① まずは、「物の見方を変えること」である。
 人間は頭の中に何らかのモノサシがないと、物事を理解することができない。そのために、物の本質を捉えるために「カテゴリー」と呼ばれる分類表をつくるのがいいだろう。それで、複数の指標を設けることができる。
 ② 次に、「常識を疑うこと」である。
 例えば、有るものを無いとする、反対のことを言う、正しいことを間違いとする、役に立つものを役に立たないとする、変化しないものを変化するとする・・・。
 “だまし絵”とは、どこに焦点を当てるかによって見えるものが変わってくるということを教えてくれる。つまり、視点を変えることによって、見え方が変わってくるのである。当たり前だと思っていたことが、そうではなかったと・・・。
 何かにつけて、当たり前だと思い込んで生きている自分の危うさ。改めて、自分の中の当たり前を洗い出し、疑ってみることをしてみたい。いくつも変革のテーマが生まれてきそうだ・・・。チャレンジを楽しみたいと思う。

                   ”考える言葉”シリーズ(22‐40)