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考える言葉

 

伝える力

 
2023年04月03日(月)

 書棚の整理をしていると、もう数年前に購入していたものだが、『東大物理学者が教える「伝える力」の鍛え方』(上田正仁 著)という文庫本が目に止まった。
 恐らく移動中の機内で読んだのだろう・・・。読んだ形跡はあるのだが、内容が定かでなかったので読み直してみると、“伝える力”を鍛えることが人生をより深く生きることにつながり、いかに有用であるかを論理的に述べてあったので紹介したい。
 著者は以前、『「考える力」の鍛え方』についても本を出しているのだが、両者の違いについて、「考える」ことは自己完結できるのだが、「伝える」という行為は相手の存在が不可欠であることだ、と述べている。
 その違いをしっかり認識したうえで、“伝える力”を考える必要がある。つまり、「伝える」という行為は、伝えたい内容が他者によく理解されることが目的であり、大前提なのだ。
 それを踏まえた上で、“伝える力”には次の3段階のレベルがあるという。
 ① レベル1・・・「用事が足りる伝え方」(事実・用件・伝言など、マニュアル通りに伝えられるレベル)
 ② レベル2・・・「聞く気にさせる伝え方」(プレゼンテーション、意志表示など、考える力が必要なレベル)
 ③ レベル3・・・「人を動かす伝え方」(交渉など、創造力が必要なレベル)
 そして、最後に、レベルでは測れない永遠の課題として、「人を育てる伝え方」(教育、子育て、部下の指導など)にまで言及している。
 「考える力」を鍛えるカギは、自己完結できるので、自ら課題を見つけ、解決に至るまで諦めない人間力が問われる。
 一方、今回のテーマである“伝える力”の基本は、次のとおりである。
 先ず、最初に話の幹を伝え、枝葉は可能な限りきり落とすことと、それを相手の立場に立って伝える工夫にあるだろう。
 そのためには、
 ① 何を伝えるべきかを立ち止まって考えること。
 ② 相手の立場に立って考えること。
 ③ そして、それを自分自身の言葉で伝えること。
以上3つのポイントを大切にしなければならないと考える。
 繰り返しになるが、“伝える力”を鍛えることは、ただ一つの正解を目指すスキルを学ぶことではなく、自分自身を見つめ直し、相手の立場に思いをはせる「人間力を養うことであると考える。



                   ”考える言葉”シリーズ(23‐12)