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考える言葉

 

BS経営

 
2023年05月29日(月)

 “BS経営”という言葉をご存じだろうか。
 いうまでもなく、決算書には次の三表(財務三表という)がある。
 ① 「P/L(損益計算書)」
 ② 「B/S(貸借対照表)」
 ③ 「C/F(キャッシュフロー計算書)」
 多くの経営者には、「P/Lなら分かるが、B/Sはちょっと苦手」という人が多い。
 経営者にとって、自分の会社が儲かっているのか損しているのかは最も関心が高いことなので、その計算をしている「P/L」に関心を示すのは分からないことでもない。
 だが、中長期的な視点から経営を考えようとするならば、「B/S」をしっかり理解し、活用する必要があるだろう。
 “BS経営”とは、「B/S」をしっかりと理解し、経営に活かそうという提案である。
 「B/S」とは、会社の財政状態を示した表であるが、資金をどのように調達し、運用しているか、その結果、どれくらい利益を稼ぎ出して、「自己資本の充実」につながったかを明らかにしてくれる。
 そして、“BS経営”の目的は、自己資本をいかに充実させるか目指すことであり、そのための何をなすべきかを徹底して考え、実行することである。
 戦後の日本経済において、企業の発展の決め手は「売上と利益の規模の拡大」だと考えられていた。しかし今や、この考え方だけでは企業の舵取りは難しい。バブル崩壊後の「失われた30年」という現実を見れば、一目瞭然である。
 IG会計グループでは、毎月二回、「将軍の日(中期五ヵ年計画策定セミナー)」を開催しているが、参加されている経営者の殆どが、損益を中心とした計画を策定しているケースが多い。結果として分析予測型の目標設定になってしまっている。
 そこで、視点を、あるべき理想の「B/S」を思い描くことから始めたらどうだろう。
納税後の純利益志向で自己資本の充実を目指す考え方である。
 自己資本の充実を目標に掲げると、年々の純利益の積み上げが必要となるので、自ずと中長期的な視点(5~10年、あるいは20年)が生まれてくる。
 変化の激しい時代環境だからこそ、「長い目で、多面的に、根本的に」物事を観て、
意思決定する必要が、経営者に求められている。
 自己資本の充実をテーマとする“BS経営”はまさに、長期ビジョンに立った計画の策定であり、小さくても健全な企業体質を目指す経営だといえる。変化対応力は、売上の規模ではなく、自己資本の充実によって保障されるのである。



                   ”考える言葉”シリーズ(23‐19)